認知工学研究会

“認知工学”という言葉は従来からありましたが、ここでは、少し異なる意味で用いております。 従来からの定義では、認知科学の知見を活かして役に立つものを作ることを指していました。 ここでは、認知機能を持つ機構を人工的に作りだすことを目的としています。 したがって、本研究会の最終的な目標も、知見を蓄積するだけでなく、実際に そのような機構を設計・開発 してみることにあります。

ここで、“認知機能”とは、外界の知覚、知覚の統合としての、実体に対応付いた認識、 認識の解析を通じた知識の保存、 知識に基づく推論等を通じて、実世界で意味ある行動を行えるようになるための機能であるとします。 また、認識に基づいて人間とコミュニケーションを図れる機能も含めることにします。 ここでは、このような機能をもった機構を実現することを目指します。

実世界で、認知機能に基づき、よりよい行動をとれるように知識蓄積、仮説生成、推論を繰り返すことにより、 実世界に関する知識を自律的に得てゆく機構、および、その知識(=常識)に基づいて 人間とよりよくコミュニケーションがとれるようにする技術の確立が目標です。したがって、 必ずロボットのような、物理実体の制御を対象として技術の検討を行うことを基幹とします。

認知工学の推進課程で、認知科学の知見を援用しますが、脳と同じ機能の実現を目指している わけではないので、有効と考えられるものだけを選択的に利用することにします。 工学的な検討であるので、あくまで、機構の創成を目標とし、自然界では存在しない 技法も積極的に考えてゆきます。

具体的には、自律移動ロボットを用いたゲームを設定し、その範囲内で必要となる認知機能を 追求します。これにより、現実的に実現可能な技術の確立をめざします。例として、 人間を司令官とし、人間と会話しながら戦闘ゲームを実行するロボットの実現をとりあげます。 ロボットには、モータと画像センサが付加されており、無線LANを経由してクラウドと接続されます。 クラウド上には、攻撃する、逃げる、状況を調査する等の基本行動を実現するエージェント、 エージェントの動作を記録するログ機構、ログから因果律を抽出して知識ベースを構築する機構、 知識ベースの知識をもとに仮説推論を行う機構、仮説を検証することを目標とした行動計画を 立てる機構等を含む、大規模な強化学習系を実装します。その基盤として、MAGIミドルウェアを利用します。

本研究会では、以上のような機構に関して、 具体的な設計や実験結果に関する検討を行ってまいります。ここで開発された技術は、 家電や車において、人間が機械機構を制御する新しいユーザインタフェースとして利用 できる可能があり、きわめて重要であると考えております。定期的な会合を通じて、

  • エージェントの機能設計と状態空間の定義
  • 知識ベースの設計
  • 仮説生成と仮説推論機構の設計

等について議論を進めてまいります。検討結果は、論文の形式で公開します。